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蟲師

1~7 巻  漆原友紀

「あれらは…幻じゃないん…だよね」

昨年深夜アニメ化もされ、様々なところで評判を聞くシリーズです。
前から気になってはいたのですが、なかなか手が出ないでいたところ、友人が貸してくれました。ありがとう!
そういったわけで読んでみて、本当に良い作品なんだと改めて思わされました。
この不思議な空気感。どこまでも静かで淡々としていて、昔話を聞いているような懐かしさを感じさせる。なんとなくぴんと張り詰めた雰囲気でもあるのにどこか優しくて物悲しくて切なくなる。それは主人公であるギンコの存在も大きいのだと思いますが。つかみどころがなく飄々としているのに、命に対してはどこまでも純粋に真摯に接している。かっこいい。
お話も一つ一つが本当に魅力的。話の終わりに必ず絶望と希望が同居している。ただ救いを示すだけでも、ただ生死を示すだけでもなく、どちらもバランスよく配されていて、見事だとしか。

私はもともとこういったどこか不思議で、人間と「ひとではないもの」が互いに少しだけ関わり合って展開される世界の話がとても好きで。私には見えないけれど「ひとではないもの」がきっとこの世に存在するであろうそれらを身近に感じさせてくれる作品は、一見御伽噺のような話でも私にとってとてもリアルに感じられるのです。
「ひとではないもの」とは例えば、神であったり天使や悪魔であったり龍であったり、といった想像上の存在(神様は想像上といったら怒られるかもしれませんが)。日本は特にそれらの存在を深く信じる国柄だと思います。八百万も神様がいるとか、幽霊が出るだとか、モノが動いたりしゃべったりするだとかいう話はいろいろありますし。その中でも私が特に親しみを覚える「ひとではないもの」が妖怪です。この作品で出てくる『蟲』は、作者さんがあとがきにもかかれているようにそれら妖怪にまつわる話をアレンジして作られたものも多くあるようですね。妖怪の名前とかもちょっと変えて出てくるし。けれど妖怪と蟲の違いははっきりしていると思う。
『妖怪』はどちらかといえばはっきりした存在。意思も持っているものがほとんどで、人語も解し、姿かたちや生活習慣が人間と異なっている、というもの。『蟲』は形もなにも曖昧な存在。意思というよりは本能にちかいものしか持っておらず、言葉を話すものは少なく、姿かたちも奇妙なものばかり。
こう考えると、『蟲』は人間とは全く違った生態系、例えば動物や植物のような存在のように思えるけれど、そうではない。『蟲』という存在は、「生命のそのものに近いもの達」だと、第一話でギンコは説明している。そこが面白いとこだなあと思うのです。うーん、上手く説明できてなくて悔しいけど。

どの話も好きだけど、やはり『眇の魚』ははずせません。ぬいが「我々と同じように存在しているとも」と蟲のことを説明している。「在り方は違うが 断絶された存在ではない」「我々の"命"の 別の形だ」と言っている。生命の多様性(私たちが認識している以上に生命は溢れている)ということを象徴するせりふだと思います。
そしてヨキがギンコに「なった」話であること。この、トコヤミを抜ける方法が「名前」を思い出すということであるのが面白いなと思います。「名前」をつけることによって「存在」が確立される。名前は蟲の世界では必要がないものであるけれど、人間の世界に戻るためにはとても大事なものであるということ。これは当たり前なことなようでとても重要なことであると思う。
『天辺の糸』も好き。星が「見えなくても ずっと空にいるんだ」という吹。どこにもいかない、というのは安心できることであるけれど、変わってしまったものを受け入れるということは難しい。
『露を吸う群』も考えさせられる。「足が竦む」ほどの膨大な時間。それをただの「昨日までの続き」と考えるか「新しく生まれ変わった」ものと考えるかで、気の持ちようが180°変わってくる。またそれは今私たちを当然のように待っているものだと思い込んでいるけれど、いつ途絶えるかも分からないものでもある。時間というものは大事なもので、難しいもの。
『重い実』。この話も本当にとても好き。サネがかわいい(笑) この作品全体的に思うのは、希望と絶望が共存している作品だということ。それぞれの登場人物が選んだ選択が正しかったのかどうかは誰にも分からないこと。ただ、その選択をしたことで、登場人物達が納得できているか否か、ということが重要なのだ。この話はそのことを特に象徴している話のように思います。生きていくという希望、生き続け死ぬことはできないという絶望。けれど、そのことに祭主は納得している。
『筆の海』。アニメの最終話に使われた話。私もこの話が一番好きかもしれません。「生きてるんだよ」という淡幽が本当に綺麗。誰もが背負う生きるための業。

他にも『草を踏む音』(イサザかっこいい)とか『山抱く衣』(応援したくなる)とか『暁の蛇』(切ない)とか『棘の道』(自らを犠牲にしてまでやらねばならないことがあるということは果たして幸せなのか不幸なのか)とか、好きな話はたくさんあります。ていうか全話好き。

人はただ生き続けることが正しいのではないだろう。
だからこそ生き方に意味を求める。そのためにただ懸命に生きる。
蟲もただ懸命に生きているだけ。悪気もなにもないのだ。

本当に好きなシリーズです。これからも続きが楽しみ。
アニメはもう何話か5月にBSフジで放送されるそうですね。見れたら絶対見たいなぁ。

そういえば、夏?だか秋?だかに映画化するそうで。
しかも実写!しかも監督はあの『AKIRA』の大友克洋氏!ギンコ役はオダギリジョー氏!
色々びっくりです(笑)
蟲はCGで再現かなやはり。綺麗でリアルに見れたら嬉しい。そこらへんはアニメーション監督でもある大友さんだから心配いらないだろうと思いますが。
つかこの作品はどちらかというと雰囲気が重要だと思うので、そっちが上手く表現されてると嬉しいなぁと思います。アニメは少なくとも私的にはかなり満足のいく物だったので、余計に。

そんなわけでちょっと興味あるので、公開されたら見てみたいと思ってます。
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